ディーゼル車のトルクが大きい理由!圧縮比と燃料供給に秘密があった
あなたは、ディーゼルエンジンを積んだ車の運転経験がありますか? ディーゼル車でアクセルを踏み込んだ時、背中がシートに「ぐう〜ん」と押し付けられる感覚は理屈なくたまりません。
車に乗り始めて30年。この傾向は現在の車でも続いています。
では、なぜディーゼルはトルクが大きいのか? その理由は、ディーゼルエンジンの仕組みにあります。
今回は「ディーゼル車のトルクが大きい理由」について、アニメーションを駆使して分かりやすくご説明します。
ディーゼル車のトルクが大きい理由
ディーゼルエンジンが、大きなトルクを生み出す理由は、
- 圧縮比の高さ
- 燃料供給のタイミング
この2つです。
これからアニメーションを使って解説します。サクッと攻略していきましょう。
圧縮比の高さ
エンジンは、シリンダーの中に吸い込んだ空気や燃料を圧縮して爆発させます。ディーゼルとガソリンでは、この圧縮する比率がなんと2倍くらい違います。
アニメーションで見ると、こんな感じです。
大体の感覚がつかめるでしょうか? ご覧のように、ディーゼルはガソリンに比べて半分くらいにぎゅっと縮めています。
実際のエンジンの圧縮比は10〜20程度なので、アニメで見るよりももっと圧縮されています。
- ディーゼルの圧縮比 ・・・ 20くらい
- ガソリンの圧縮比 ・・・ 10くらい
ガソリンエンジンでは10分の1に縮めるのに対し、ディーゼルエンジンでは20分の1まで空気をぎゅっと縮めているんですね。
圧縮比が高いと、どうなるかと言うと、
- ディーゼルは圧縮比が高い
- 1回の爆発の力が大きい
- エンジンが力強くなる
- トルクが厚くなる
圧縮比が高くなればなるほど、一般的にはトルクが厚くなっていきます。つまり厚いトルクの秘密は、20分の1まで縮める「すごく高い圧縮比」だったんです。
しかし圧縮比を高くするとエンジンへの抵抗も大きくなるので、あまり速く回せません。なのでディーゼルはトルクは厚いが、高回転型のエンジンには向きません。
でも、ディーゼルだけがどうしてそんなに高い圧縮比に出来ちゃうのか? そこには、さらなる秘密が隠されています。
引き続き見てみましょう。
ディーゼルの燃料供給は圧縮した後
どうして、ディーゼルは高圧縮が可能なのか? それは、燃料供給のタイミングにあります。
ディーゼルエンジンは、空気だけをシリンダーに吸い込んで20倍に圧縮します。20分の1にも圧縮された空気は、その性質上非常に高い温度になっています。
しかしシリンダーの中は空気だけなので、まだまだ爆発はしません。
ここが、肝心なところです!
「空気だけを先に圧縮」してしまうところが、ディーゼルの高圧縮の秘訣なんです。
ここは、次のガソリンの所で比較しますので、ちょっと覚えておいて下さい。
その空気が高い温度になった直後に、軽油をシリンダーの中に直接噴射します。そして、シリンダーの中で爆発します。ちなみに、ディーゼルには点火プラグはありません。超高温なので、噴射するだけで爆発します。
では、ガソリンエンジンではどうなんでしょう?
ガソリンの燃料供給は圧縮する前
ガソリンエンジンは、空気とガソリンを混ぜた物をシリンダーに吸い込んで10倍に圧縮します。ディーゼルが20倍にも圧縮するのに比べて、10倍とはいささか物足りないですよね。
ガソリンエンジンの場合には、吸い込む空気に予めガソリンを混ぜているため、20倍に圧縮すると圧縮途中で勝手に爆発してしまします。いわゆる、異常燃焼です。
ディーゼルは「空気だけの圧縮」なので、圧縮比を高くできます(20倍)! 対して、ガソリンエンジンは燃料混合なので圧縮比を高く出来ません(10倍)!
この燃料を供給するタイミングが高い圧縮比を生み出し、結果的に圧倒的なトルクに繋がっているのです。
さいごに
さて、おさらいです。
ディーゼル車のトルクが大きい理由は「圧縮比の高さ」と「燃料供給のタイミング」でした。
- 圧縮比の高さ
ディーゼルは圧縮比が高い
1回の爆発の力が大きい
エンジンが力強くなる
トルクが厚くなる - 燃料供給のタイミング
ディーゼルは空気だけを圧縮する
空気の圧縮なので異常燃焼が起きない
圧縮比が高められる
トルクが厚くなる
以上です。
最後に、追加の情報です。
今までの理由の他に、ディーゼルのトルクが大きいのは「ガソリンよりも軽油の方がカロリーが高い」ということがあります。同じ量のガソリンと軽油を爆発させたら、軽油の方が高エネルギーということです。
ただ、今回の記事は物理的な数字を求めるものではなく、一般車における「エンジンの仕組みの違い」にスポットをあてたものです。カロリーとトルクの関係については、専門家の方におまかせしたいと思います。