車のトルクとは何か?馬力との違いも分かりやすく解説

2019年7月3日

トルクや馬力についての理解が深まると、自分好みの車が探しやすくなります。さらに、カタログを眺めるだけで楽しくなってきます。ただトルクって聞くだけで、なんとなく難しそうな気がしますよねぇ。

一般的な両口スパナ

でも、心配はいりません。ナットとスパナを使った具体的な題材をもとに、分かりやすく解説しますから。専門的な知識も必要ありません。

トルクを体感してみる

まず、トルクと馬力を動画を通して体感してみましょう。ここでは「トルクが大きいってこんな感じ!」みたいな感覚がつかめればOKです。

私が実際に感じた例を上げます。

まず、低速トルクが強烈に大きいトヨタのランドクルーザーから。ちなみに、助手席でビビりながら説明を聞いているのは私です(笑)。

トヨタ感謝祭での試乗記録(福岡ヤフオクドーム)

実際に試乗してみると、力強く「グイグイ」進んでいく感じがたまりません。ランクルの大きな車体が、25度の急な坂を軽々と登っていきます。

次に、抜群の操作性を誇りながら高回転トルクが大きなトヨタ86。こちらは佐賀県唐津市で行われたラリーを観戦した時のひとコマです。

スタート直後の13秒しかない映像ですが、エンジンを高回転に保ちながら上手にトルクを引き出していることが分かります。

佐賀県唐津市で行われたラリー

このとき86のドライバーさんは、シートに背中が「グイグイ」と押し付けられていることでしょう。

ランクルの低回転トルクであれ、トヨタ86の高回転トルクであれ、この「グイグイ感」がトルクの正体といっても良いでしょう。

なんとなく「トルクってこんな感じ〜」と把握できたところで、もう少し具体的な説明に入ります。

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トルクとは

トルクはねじる力、もしくは回転する力です。これだけでは、まだ分かったような分からないような感じでしょう。でも安心してください。具体例をあげながら、分かりやすく解説していきます。

「ナットをスパナで回す場面」を想像してください。

ナットとスパナ

スパナは、説明の便宜上とても長くて1メートル(笑)。そして、その右はじに1キログラムの力をかけます。

1メートルのスパナで1キログラムの力をかける

この時、ナットに伝わる「ねじる力」がトルクです。

ナットにトルクが伝わっているところ

トルクの大きさは「トルク = 長さ × 力」で計算できるので、

1kgf・m = 1m × 1kgf

となります。

1kgf・mのトルクがかかった状態

単位の「kg」に「f」が付いているのは、重さではなく「ちから(f:フォース)ですよ」という意味です。重さと力の違いにともなって、単位を使い分けているだけです。

ちなみに、3代目プリウスを例にだすと、

  • エンジンの最大トルク 14.5kgf・m
  • モーターの最大トルク 21.1kgf・m

ナットにかかるトルクが1kgf・mなので、エンジンは約15倍、モーターは約21倍のトルクがあることになります。モーターのトルクの大きさには驚かされます。

単位について、もう少し続けます。

「kgf・m」の新しい単位として「N・m(ニュートンメートル)」が使われはじめました。

2つの関係性は、

  • 1kgf・m = 9.8067N・m

これをザックリ表すと、

  • 1kgf・m ≒ 10N・m

です。

先程の例を「N・m」に置き換えると、

1N・mのトルクがかかった状態

こうなります。

まぁ単位が違っても、トルクの考え方は同じです。

ここでのポイントは、トルクは「その瞬間のねじる力」と考えることです。回す量は関係ありません。その証拠に、トルクの計算式は「長さ(1m) × 力(1kg)」でした。

これを押さえておくと、これからご説明する「トルクと馬力の違い」もサクサク理解していただけるはずです。

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トルクと馬力の違い

エンジン内部のピストンとバルブ

トルクは「瞬間的な力の大きさ」でしたが、馬力は「一定時間の仕事量」です。

  • トルク ⇒ 瞬間の力
  • 馬力 ⇒ 仕事量

簡単に言えば、力か量かの違いです。

具体的には、次の式で計算できます。

馬力 = トルク × 回転数

トルクに、回転数をかけるだけです。

先程の、レンチの例でご説明します。

1kgf・mのトルクがかかった状態

「1kgf・m」のトルクをかけながら、ここも便宜上1分間に1000回転させるとします(笑)。

馬力=トルク×回転数-の説明

正式な計算式では、定数(約0.0014)もかけるので、

馬力 = トルク × 回転数 × 定数(0.0014)

定数は、決まりごとだと考えてください。

これに数字を当てはめると、

馬力 = 1 × 1000 × 0.0014

つまり、

馬力 = 1.4 PS

1.4馬力となります。PSは馬力の単位です。

また単位の話になりますが、馬力も最近では出力(kw:キロワット)に変わりつつあります。

2つの関係性は、次の通りです。

1ps = 0.7355kw

要は「馬力は仕事の量」と覚えておけば間違いありません。一瞬の力ではなく、あくまで「馬力 = 仕事量」だということです。

では引き続き、実際に「車のスペックを見る時のコツ」をご紹介します。トルク表示を賢く読み解いていきましょう。

トルク表示の賢い見方

ランドクルーザープラドの出力とトルクのスペック

車のスペック表をみると、必ず最高出力や最大トルクの記述があります。出力やトルクの大きさも気になりますが、それよりも最大トルクがでる回転数(r.p.m)に注目してください。

※ r.p.mは「revolutions per minute」の略です。

  • revolutions = 回転数
  • per = 割ることの
  • minute = 1分間

つまり「r.p.m = 1分間の回転数」です。

その理由を、性格の違う2つの車を例にあげてご説明します。

次の表は、力強い走りを売りにしている高級車の「ランドクルーザー・プラド」と、スポーツカーのなかでも絶大な人気をほこる「トヨタ・86」のスペックです。

最高出力
kW/r.p.m.
最大トルク
N・m/r.p.m
ランドクルーザー・プラド
130 / 3,400
450 / 1,600〜2,400
トヨタ・86
 
147 / 7,000
205 / 6,400~6,600
最大トルクの回転域(赤文字)を見ると、ランクルは2,000回転程度、86は6,500回転程度で最大トルクを発生することが分かります。

一般的なエンジンは、最大トルクが出る回転数あたりが「もっとも燃焼効率が良く燃費も良い」と言われています。

言いかえれば、エンジンが得意とする回転域は最大トルク周辺であり、その回転域を上手に使えばエンジンの魅力を引きだせるということです。

さいごに

記事の冒頭では「ランドクルーザーと86」の動画を見ていただきました。極端な例でしたが、ランドクルーザーは低回転から中回転域を使った走りが王道であり、86は高回転域を活かした走りに醍醐味があるといえます。

つまり「最大トルクがでる回転数で その車の魅力が分かる」と私は考えます。もちろんエンジンとタイヤをつなぐギヤ比でも感覚は変わります。ただ、回転数が大きなひとつの指標になるのは間違いないでしょう。

最後に、おさらいです。

  • トルク ⇒ 瞬間の ねじる力
    トルク = 長さ × 力
  • トルクと馬力の違い ⇒ 力か量かの違い
    トルク = 瞬間のねじる力
    馬力 = 一定時間の仕事量
  • トルク表示の賢い見方
    最大トルクがでる回転数(r.p.m)に注目
    最大トルクの回転数で魅力が分かる

以上です。

ここまで書いていて愚痴るのもなんですが、75キロワットとかよりも100馬力の方が私はしっくりくる感じがします(笑)。

車のカタログなんかでは、まだ併記されていることが多いので違和感はありません。でも慣れておかないと、いずれ「kw」だけの時代がやって来るのでしょう。時代は変わりますねぇ。


今回はトルクについて見てきましたが、エンジンに関する記事が他にもありますのでご紹介しておきます。

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2019年7月3日エンジン