スタッドレスを夏に使用する!それってホントに大丈夫?

2016年1月26日スタッドレス

スタッドレスタイヤを、夏場に使用されたことはありますか?

スタッドレスにも寿命があります。なので「冬タイヤとしてはもう効果がなさそうだから、夏に履きつぶしてしまえっ!」 ...こんな考えが、頭をよぎるのも無理はありません。

ただ、それって本当に大丈夫なのでしょうか?

こんなことを書いている私も、過去にスタッドレスを履きつぶした経験があります。そうです、夏場でも交換せずに冬タイヤのまま過ごしました(汗)。でも、これにはちょっと注意が必要です。夏タイヤと冬タイヤでは、やっぱり違いますから。

今回は、スタッドレスタイヤを夏場に使用するのは、「あり」なのか「なし」なのか? こんな問題について書いてみます。それから、履きつぶした経験から気づいた「意外な落とし穴」もご紹介します。

スポンサーリンク

スタッドレスの夏走行は危険?

結論から先に書くと、スタッドレスタイヤを夏に使用するのはおすすめできません。理由は、思っているよりも制動距離が伸びるからです。止まるまでの距離が長くなると、それだけ事故を起こす確率が大きくなるのは言うまでもありません。

ではどれだけ、夏タイヤより「冬タイヤの方が制動距離が長い」のか? 比較実験を使ってご説明します。危険度が一目瞭然で分かります。

実験内容は、乾いた路面と濡れた路面でのフルブレーキテスト。テストで使われている車両は、ABS装備のプリウスです。

「これって ホント!」 って声がでてしまうほど、スタッドレスの制動距離が伸びています。特に、濡れた路面の差がすごいですね。

実験結果をまとめてみます。

制動距離距離の差
実験速度時速80Km
使用タイヤ夏タイヤ冬タイヤ
乾いた路面18.8m24.5m06m
濡れた路面19.4m36.2m12m

これらの結果から、スタッドレスタイヤの夏場での使用は危険性が高いことが確認できます。濡れた路面では予想以上に危険度がアップしています。

また、ブレーキをかけた道がもしカーブしていたら。もっともっと、危ない体験をするハメになってしまいます。もちろん走行速度が低ければ、制動距離の差は縮まります。

ただ、たった数メートル 、されどその数メートルで「事故る or 事故らない!」が決まってしまいます。かくいう私も、知らなかったとはいえ反省しなければいけません。これは自分だけの問題ではありませんから。

ウエットで制動距離が伸びる理由

スタッドレスタイヤは、冬の環境に焦点をあてて開発されています。特に最近では、氷上性能のアップで各メーカーがしのぎを削っています。そこが、スタッドレスタイヤに求められる性能だからです。

したがってスタッドレスには、パターン(地面と接触する部分)に「細かな切り込み」がたくさん入っています。これは、タイヤが氷を踏んだ時にできる「薄い水の膜」の上で滑らない工夫です。

スタッドレスタイヤのパターン(細かな切り込み)

実はこの切り込み、濡れた路面ではあまり役にたちません。

例えば、轍(わだち)にたまった水たまりを踏んだ時などは、タイヤの下に「水の膜」が出来やすくなります。これは切り込みの影響です。

ハイドロプレーニング現象

タイヤと路面の間に水の膜が出来てしまうと、極端にグリップ力が低下します。これは「ハイドロプレーニング現象」と呼ばれています。

つまり「細かな切り込み」は氷上ではメリットになり、濡れた路面ではデメリットになるということです。

半面、夏タイヤは氷上性能にこだわる必要はありません。ウエットな路面やドライ路面に、パターンを最適化できる訳です。

夏タイヤと冬タイヤの氷上性能の違い

ドライで制動距離が伸びる理由

スタッドレスタイヤの特徴の1つとして、ゴムの柔らかさが上げられます。柔らかい方が、凍りついた路面をガッチリとつかめるからです。もうお分かりだと思いますが、この柔らかさは温度が高い夏の路面には向いていないんですね。

スタッドレスタイヤの溝とプラットホーム

タイヤの温度が上がれば、スタッドレスのゴムはさらに柔らかくなります。その柔らかくなったゴムは、路面との摩擦が少なくなり滑りやすくなってしまいます。

また、熱に弱いゴムは変形しやすくなり「パターン本来の性能」を発揮できません。夏場にスタッドレスで走行すると、「グニャ」っとした感触があるのはそのためです。

スタッドレスタイヤは、冬場の安全を考えて開発されたもの。よく考えれば、こんなデメリットがでてしまうのは仕方ありません。夏タイヤと冬タイヤでは、開発の意図が違うのです。

それから、もうひとつお伝えしたいことがあります。この記事の冒頭でも書いた通り、私は何度もスタッドレスを履きつぶしてきました。それもワンシーズンだけではありません。

危険をうすうす感じながら、なぜ最初の夏だけで「履きつぶし」をやめられなかったのか? その理由について触れておきます。

ここまで、読んでいただいたあなたが、

  • 履きつぶしは ダメ派
  • 履きつぶしも OK派

このどちらに、賛成なのか ...その判断は、この後を読んでいただいてからでも遅くはありません。

スポンサーリンク

安全システムは意外な落とし穴

私が「スタッドレスの履きつぶし」をやめられなかった理由。

それは「危険を肌で感じられなかった」からです。

最近の車は、ハイテクを駆使しています。ABSとかTRCとか。こんな安全システムに支えられて、私達は運転をしています。

安全システムの一例
  • ABS:アンチロック・ブレーキ・システム
    急ブレーキをかけても、タイヤがロックして滑らないようにコントロールするシステム。
  • TRC:トラクション・コントロール
    タイヤが滑ってふらつきそうな時に、4つのタイヤの空転を制御して車体のバランスを取るシステム。

ABSが効いていれば、タイヤが完全にロックすることはまずありません。ロックする直前が、ブレーキの効きが一番良くなりますから、ABSはそんなコントロールをする訳です。

TRCが効いていれば、車が横滑りすることはありません。4輪を素早く制御して、車の体制を整え続けます。

その代償として、ドライバーは滑る感覚が少なくなります。

3代目プリウスの運転席から見たシステムインジケーター

すべての車がそうだとは言いません。ただ、多くの車が可能な限りのコントロールをしてくれています。言い換えれば、その時のドライバーは危険な状態にあることに気づきにくいんですね。

平たく言えば、こんな感じです。

  • タイヤが滑りそうでも ABSが効いて滑らない
  • 車がふらつきそうでも TRCでふらつかない

ただし、滑る感覚がなくてもタイヤは限界を超えています。

つまり、安全システムの限界を超えれば「一気に制御不能になる」可能性が高いと考えられます。

「安全システムは 意外な落とし穴」と表現したのは、こんな経験上の感覚をお伝えしたかったのです。少なくとも私にとっては盲点でした。

その昔は、車の反応で危険が肌でビンビン感じられました。でも今の車は、限界を超えてもそんな挙動が少ないのは否めないでしょう。

その証拠が、冒頭の実験動画です。時速80Kmでフルブレーキをかけても、スピンはおろか横にも向いていません。とっても優秀なんですね、今の車は。ABSもTRCも優秀だからこそ、人の感覚を狂わせてしまう危険性を含んでいると思います。

もしあなたが、「夏にスタッドレスでも大丈夫!」と感じられたとしたら、その危険に「気付かないだけ」ということかもしれません。

さいごに

スタッドレスタイヤを夏に履くと、制動距離がずいぶん伸びてしまうのが分かっていただけたと思います。理由は、タイヤのパターンの違いや、ゴムの柔らかさでした。

また、ハイテクな安全システムに頼りきってもいけません。タイヤ交換などの愛車の整備は、私達ドライバーの責任です。

それから ..スタッドレスタイヤは、その寿命の判断が難しいですね。溝の深さだけでは、判断出来ませんので。もし心配されているとしたら、このスタッドレスの記事を参考にしてください。

スポンサーリンク

2016年1月26日タイヤスタッドレス