トンネルの照明がオレンジから白へ?ライトの色問題をスッキリ解決!

2020年2月11日

高速道路などのトンネル内に使われているライトの色は、オレンジ色だけではなく白色が徐々に増えてきています。

「あれっ、トンネルではオレンジのライトが見やすいから使われていたのでは?」と、ちょっと車に詳しい方は疑問に思われるかもしれません。

オレンジ色のトンネル照明

そうなんです。今までは「トンネルではオレンジ色のほうが遠くまで見渡せるのでライトの色はオレンジです」と言われてきました。

ではなぜ、オレンジから白、こんな変化が今起こっているのでしょうか? なんだか不思議ですよねぇ。

今回は、そんな「トンネルの色問題」を考えてみましょう。

  • なぜオレンジから白色なのか?
  • 視認性は悪くならないのか?

こんな疑問をスッキリ解決します。

なぜオレンジ色から白色なのか?

高速道路の白いLED照明2

オレンジ色から白色へ変わっている理由は、使われているライトの種類が変わってきたからです。

ライトの種類
  • 過去:ナトリウムランプ(オレンジ色)
  • 現在:LED(白色)

いわゆるLED化です。

でも、なんだかモヤっとする!

「LEDは電気代が安いから?」とか、薄っすらメリットも分かる気がしますが「デメリットもあるんじゃね?」とも思ったりする訳です。

というのも、記事の冒頭でも触れた通り「オレンジ色は視認性が良い」といった理由で使われていたはず。この一例だけでも、なんだか納得できません。

このあたりをスッキリさせるために、次の章ではナトリウムランプとLEDを比較してみましょう。

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昔と今を比較してスッキリしてみた

昔から使われているナトリウムランプのメリットに焦点をあてて、現在の主流であるLEDと比較していきます。

寿命が長い

寿命が長いと、メンテナンスが少なくてすみます。高速道路などでは交換作業も危険がともなうため多くの費用がかかります。長寿命であれば、作業も少くて済むので好都合な訳です。

でも後発は有利ですね。ご存知の通りLEDはとても長寿命なのです。

ちなみに、トンネルで使われているLED照明の交換頻度は10年と優秀です。これまでの水銀灯やナトリウム灯との比較を御覧ください。

水銀灯ナトリウム灯LED
交換頻度毎年3年10年
さらにLEDは進化を続けています。負けるはずがありません。

視認性が良い

トンネルの中は排気ガス等で視界が悪くなりがちです。そんな状況では、黄色い光が遠くの物まで見分けやすくなります。つまり、物体を認識しやすく視認性が良いといえます。

黄色は視認性が良い

これは、霧が発生した時に「黄色のフォグランプ」が活躍する理由を考えれば納得がいくでしょう。

霧がかかった道

白い光では、光が霧にあたり乱反射して見えにくくなります。

ところが最近のトンネルは、排気ガスがたまることがほぼありません。なぜなら、法律で排気ガスの規制が厳しくなったためです。真っ黒な排ガスを撒き散らしながら走る車が少くなりました。

さらに、トンネル内の排気のシステムも充実しています。つまり、空気が汚れないから白い色の光でもクリアな視界が保てるのです。

例えば高速道路のトンネルの屋根に、でっかい大砲みたいな扇風機が付いているのにお気づきになったことがあるかもしれません。あれも排気システムのひとつです。ブォーンと大きな音を立てているときは排気の真っ最中です。

発光効率が良い

街灯で使われている水銀灯

ナトリウムランプは水銀灯の一種です。ナトリウムは以前の水銀灯よりも約半分の消費電力でした。消費電力的には優秀だったのです。

体育館や大きな倉庫に水銀灯がよく使われているのも、発光効率が良いから。つまり、明るさが強みなのです。

だたこれは昔の話です。発光効率で比べれば、新しいLEDに勝てるはずがありません。消費電力のザックリとした比較をあげておきます。

水銀灯ナトリウム灯LED
消費電力500W300W100W
比べるまでもないといったところでしょう。

紫外線が少ないので虫が集まりにくい

虫はライトによく集まります。「飛んで火に入る夏の虫」と言ったことわざがあるくらいですから、虫は光が好きなんですね。でもナトリウム灯には紫外線が少ないので虫が集まりにくいのです。

虫が少ないと汚れにくい。汚れにくいから手が掛からない。メンテナンスの知恵ですね。

ただこのメリットは、LEDも兼ね備えています。特に電球色のLEDは、ナトリウムランプと同じくらいに紫外線が少ないのです。まさに文明の利器といったところです。

ちなみに、観葉植物などを販売している店舗では、照明にLEDを使わないと店員さんから聞きました。LEDは紫外線が少ないために、植物の生育が悪くなるのだそうです。

植物販売店の照明(蛍光灯)

見上げてみると、確かにLEDではなく蛍光灯が使われていました。

寒冷地の使用にも耐えうる

ナトリウムライトは低い温度に強いそうです。低温下における稼働率の克服が課題なのでしょう。極寒の環境下で保守をなさっている方々に頭が下がる思いです。

ただこれも、LEDは低温にも強いことが知られています。最近の車のヘッドライトにLEDが使われていることからも理解できます。

重箱の隅をつつけば、LEDヘッドライトは「熱があまり発生しないので、ライトに付いた雪が溶けない」といった問題も発生します。でもこれは、省エネのメリットでかき消されてしまいます。

ここまで来ると「LED万能じゃん!」と言いたくなってきます(笑)。

さて、ここまでは「トンネル照明の色問題」について見てきました。一方、それ以外にも照明にまつわる興味深い話があります。そこも、サラッと押さえておきましょう。

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トンネル照明のあれこれ

トンネルの照明については、面白い話がたくさんあります。そのなかでも、私が「そーなんだ〜」と興味をくすぐられたものを3つご紹介します。多分、面白いと思います(笑)。

オレンジ色っぽいLEDもある

我が家のリビングに付けているシーリングライトです。

白色のLEDシーリングライト

普段は白色で、こんな感じです。

そして、桜色にすることもできます。

ピンク色のLEDシーリングライト

ちょっと奮発して、色が変わるシャープ製を選んでみました。映画を見るときなどは、おしゃれな雰囲気が出るので気に入っています。

つまり、LEDでも色を変えることができるんです。だったら「トンネルのLED照明にもオレンジ色ができるでしょ!」と思われるでしょう。

私もできると思います。

ただですね、色を変えると光量が落ちます。ガクッと落ちます。我が家のシーリングライトでの体感では、ピンクにすると明るさは半分になる感じです。消費電力はそんなに変わらないはずなので、トンネルでは「白く明るく見えやすく!」となるのは納得がいく気がします。

ちなみに、オレンジと白のライトを混ぜたりもする場合もあるようです。写真だと色の違いが分かりにくいかもしれませんが、乃木坂トンネルの例をあげておきます。

乃木坂トンネルのLED照明

出入り口は中心部よりも明るい

高速道路でトンネルに入った瞬間「真っ暗で前が見えない!」と感じたことはありませんか?

さらにトンネルを出る時には「まぶしくて、なんにも見えない!」と、緊張なさる方も多いと思います。

高速道路のトンネルの出口

これは「トンネル内の暗さ」や「外の明るさ」に目が慣れる時間が必要だからです。ほんの数秒だけど、されど数秒です。その無防備な瞬間に危険が待ち伏せています。

そのため、

  • 入り口あたりの照明は明るく
  • 出口あたりの照明も明るく

こう設計されています。

こうした安全のための知恵が、トンネルには散りばめられているのです。関係者のご努力に感謝です。

夜空にまで気を配りたい

最後に、近くに天文台がある場合の話です。

良い天文台の条件は、

  • 周りが暗いこと
  • とにかく暗いこと

が最低条件なのだそうです。

宇宙から見た地球上の光

繁華街等にあるどぎついネオンはもちろん、自動販売機みたいな細々とした明かりでも影響がでるようです。自治体によっては、○○時以降は自動販売機の照明も消す努力をなさっていると聞いています。

トンネル照明とのからみから考えると、天文台的にはLEDの白い色の方が悪影響が大きいとのこと。天体観測にはナトリウム灯のような黄色みがかった光の方が影響が少ないようです。場所によっては、出入り口から漏れる明かりの色まで気を配って、トンネルは作られています。

七夕でも有名な天文台がある岡山県の美星(びせい)町では、

  • 夜10時以降は電気を消そう
  • 照明には傘を付けて光が空にもれないようにしよう
  • 屋外照明には(オレンジ色の)ナトリウム灯を推奨します

私が調べた時には、こんな条例まであるほどでした。

どうやら、これについてはナトリウムランプが有利です。白い光よりもオレンジのやさしい光のほうが天文台にとっては都合が良いのです。

まとめ

高速道路の白いLED照明

なぜオレンジ色から白色なのか? それは使われているライトの種類が、ナトリウムランプからLEDに変わってきたからです。

LEDに切り替わっている理由は、

  • 寿命が長い
    後発のLEDはナトリウムランプより長寿命です。
  • 視認性が良い
    最近のトンネルは、排気ガスがたまることがほぼありません。空気が汚れないから、白い色の光でもクリアな視界が保てます。
  • 発光効率が良い
    発光効率で比べれば、新しいLEDに勝てるはずがありません。比べるまでもないことです。
  • 紫外線が少ないので虫が集まりにくい
    このメリットは、LEDも兼ね備えています。電球色のLEDは、ナトリウムランプと同じくらいに紫外線が少ないのです。
  • 寒冷地の使用にも耐えうる
    LEDは低温にも強いことが知られています。これは、車のヘッドライトにLEDが使われていることから理解できます。

以上です。

「LEDの進化、恐るべし!」というのが素直な感想です。若い頃に技術畑で生きてきた私としては、今後の成長にワクワクするばかりです。

また「トンネルの運転がを怖い」と感じられている方は、次の記事がおすすめです。タクシードライバーの叔父から教わった秘伝です。効果は抜群ですよ。

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2020年2月11日車なんでも